暗号資産と分散投資
ウクライナの戦争で暗号資産が注目されるようになりました。簡単かつ素早い決済により、中央銀行を介して約1億ドル(約118億円)の寄付が集まったとされています。
この記事でわかること
暗号資産は今後、私たちの生活や商取引に浸透していくことのように思います。そうなれば暗号資産に対する信用が高まり、資産としての価値はさらに増加するでしょう。
しかし、マネーロンダリングや流出事件などマイナスのイメージも常に付きまといます。さらに、ボラリティが大きく、投資経験が浅いとなかなか手が出せないというのが実情です。
ボラリティを小さくし、リスクを平準化するならば「分散投資」ということになります。ビットコインが有名ですが、暗号資産の種類は2000種類を超えると言われています。それぞれの価値は玉石混交・・・無価値のものもありますが、金融庁の監督の下、日本の取引所で活発な取引が行われているものは20~30種類くらいあります。
こうした、ある程度価値が認められた暗号資産に分散投資をする方法はあるのでしょうか?
ビットコインETF【BITO】
暗号資産のETFは既にアメリカで誕生しています。昨年10月、アメリカの資産運用会社であるProSharesがビットコインETF「ビットコイン・ストラテジーETF」(ティッカーBITO)を始動させています。
https://www.proshares.com/our-etfs/strategic/bito
ビットコインETFのメリットは主に税金対策です。ビットコインの値上がり益は雑所得となりますが、ETFの売買では譲渡所得となるため税率を低く抑えられるという利点があります。
ただ、メリットはそれだけのような気がします。というか、デメリットしか見当たりません。以下、列挙します。
デメリット1 そもそもETFである意味があるのか
資産配分はほぼ100%ビットコインの先物です。ETFの武器である分散投資に寄与していません。BITOよりも素直に現物を買います。
デメリット2 コストが高い
信託報酬は0.95%、問題外の高さです。
デメリット3 現物価格との乖離が生じる
投資先が現物ではなく先物です。
デメリット4 現物が認められる見通しは暗い
現物のETFはアメリカでも認められていません。昨年11月、アメリカSECは価格操作や詐欺から投資家を守る仕組みが不十分との理由で、ビットコイン現物ETFの上場を見送っています。
デメリット5 日本で投資できません
現時点、取り扱っている証券会社はありません。金(ゴールド)のETFがアメリカで認められてから日本で承認されるまで4年くらいかかっていますので、日本で現物の暗号資産ETFが購入できるのはかなり先になると言われています。
ビットコインETFが示すもの
暗号資産へ手軽に分散投資する方法は現時点で限られています。BITOが日本で買えるようになっても、まず私の選択肢にはならないでしょう。
ただし、暗号資産は日進月歩でその技術を進化させています。日々、新しい種類の暗号資産が生まれるのは、既存通貨の弱点を克服しようとする力の現れです。
ビットコインは現時点で暗号資産の先駆者であり王者なのかもしれません。ただし、それを追うイーサリアムはビットコインの弱点を見事にカバーしています。そして、イーサリアムも課題を抱え、その課題を克服しようとするものが追随します。
歩みを続ける種々の暗号資産に広く分散投資ができる時代はいつになるのでしょうか。その技術進歩を興味深く見守りたいと思います。